班長ご挨拶
班長ご挨拶
間質性膀胱炎は、膀胱の痛み、不快感、強い尿意、頻尿などを主症状とする疾患ですが、その原因はいまだ十分には解明されておらず、診断自体も極めて難しい疾患です。臨床症状が他の下部尿路疾患と重なり、一般的な検査で明確な異常を捉えにくいことから、患者さんが長年にわたり苦痛を抱えながら、適切な診断や治療にたどり着けないことも少なくありません。こうした現状を改善するためには、全国規模で患者さんの実態を把握し、疾患理解を着実に深めていくことが不可欠です。
本研究班では、指定難病である間質性膀胱炎の患者登録を全国規模で推進し、疫学、臨床症状、検査所見、治療経過などの実態を明らかにすることに取り組んでまいります。多施設から得られる質の高い臨床情報を集積・解析することにより、本疾患の全体像をより正確に捉え、診断や治療の改善につなげていきたいと考えております。
また、診断精度の向上に向けた新たな取り組みとして、人工知能(AI)を用いた内視鏡診断技術の開発と臨床実装を進めています。間質性膀胱炎、とりわけハンナ病変の診断は、専門的経験に依存する側面が少なくありませんが、AI技術を活用することで、より客観的で再現性の高い診断支援体制の構築が期待されます。さらに、内視鏡診断に加えて病理組織診断による診断支援システムの開発も進めており、臨床所見、内視鏡所見、病理学的所見を統合した、より精度の高い診断基盤の確立を目指しています。
本研究班の大きな特徴は、厚生労働省難治性疾患政策研究事業としては比較的珍しく、臨床研究のみならず基礎研究も同時に強力に推進している点にあります。病態生理の解明、新規診断法の開発、新たな治療法の創出に向けて、これまで我が国から世界をリードする成果が発信されてきました。こうした発展の礎を築かれた前班長・本間之夫先生のご尽力に深く敬意を表するとともに、その志を継承し、さらに発展させていくことが私たちの責務であると考えております。
今後は、臨床的に類似する膀胱痛症候群についても実態調査を進め、間質性膀胱炎との異同を明らかにする研究にも積極的に取り組んでまいります。すなわち、本研究班は間質性膀胱炎のみならず、より広く間質性膀胱炎・膀胱痛症候群全体を視野に入れた研究を推進し、この領域の診療と学術の発展に貢献したいと考えております。
患者さんの負担の軽減と、適切な診断・治療の実現を通じて、ひろく国民の皆様の健康増進に寄与するためにオールジャパン体制で本研究に取り組んでまいります。関係各位のご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
秋山 佳之
前班長ご挨拶
泌尿器科では、腎臓や膀胱の尿路のみならず、副腎、男性生殖器、後腹膜など多様な臓器・組織の疾患を扱っています。病態別にみれば、悪性腫瘍、感染症、結石、機能障害、外傷・奇形などとなります。その中では、間質性膀胱炎はきわめて特異な疾患です。
間質性膀胱炎の主な症状は、膀胱の痛みや不快感、強い尿意、頻尿などです。これらの症状は、細菌性膀胱炎、結核性膀胱炎、膀胱癌、膀胱結石、過活動膀胱でもみられます。従って、上記のような症状を訴えて泌尿器科を受診すれば、このような疾患を疑って検査が進められます。ところが、間質性膀胱炎では、ほとんどすべての検査で異常がありません。そのため、原因不明の膀胱痛と扱われ、治療どころか正しい診断さえ受けられませんでした。
しかし、2000年に間質性膀胱炎研究会が発足すると、その重要性が認識されるようになりました。2015年には、膀胱内に特異的な所見(ハンナ病変)がある「間質性膀胱炎(ハンナ型)」の重症例が指定難病となり、その病態が明らかになりつつあります。その一方で、間質性膀胱炎の病態の全容は未だ不明のままで、根治的な治療法もありません。多くの苦しむ患者さんが残されています。
本研究班では、指定難病の「間質性膀胱炎(ハンナ型)」を中心としますが、これに限らず、その類似疾患・状態にも視野を広げ、診断基準、重症度基準、ガイドラインの作成・改訂などを通して、専門医や一般医、そして患者さんを含む国民の皆様に啓発活動を行っていきます。このホームページが、その目的に役立てば幸いです。
本間 之夫